什器の安全性と取り扱い方法
什器はデザインだけではなくて安全性も大事です。什器の安全性はどのようなところをチェックすればよいでしょうか?そのポイントをご説明します!
什器を選ぶときのポイント!

什器を選ぶ時は「デザイン」「価格」「サイズ」にどうしても目がいきますが、その他にも大切な要素があります。耐荷重と安全性と可搬性です。
これはごく当たり前の事を言っているようではありますが、客単価、店舗存続性、スタッフの人間関係と、現実の店舗運営にボディブローのように効いてくる分野でもあります。
耐荷重
耐荷重とはどれだけの重さのものを載せても大丈夫かということです。商品の重さは一様ではありませんので、店舗によって違います。自分の店がどのぐらいの商品の数量と重量を載せるかを考えて、それに耐えうる什器を選ばなければなりません。例えば回転什器などで重量オーバーの商品を載せてしまうと、客に「探しにくい」と思われてしまい、VND(ビジュアルマーチャンダイジング)のアイテム・プレゼンテーションに失敗していることになります。それまで動線を確保したりポイント・オブ・セールス・プレゼンテーションで頑張ってディスプレイしてきたのに、その努力が水の泡になってしまいます。客単価が下がるということです。
安全性
例えばガラスケースでは人が寄りかかったり体重を載せても割れないものを選ぶべきですし、上述の耐荷重の問題や、耐震固定も考える必要があるでしょう。特に小さなお子さんが来店する店舗では什器の凹凸部分で怪我をしないようなものを選びましょう。凹凸部分が裂けられない場合は補修したほうが良いです。
什器はスチール製のものが多く、商品を載せるという関係上それなりの重さもあります。もしこれが崩れたりしてお客様が怪我をしたりなどしてしまうと、もう内装とかディスプレイとかそんな問題ではなくなってしまいます。店の存続に関わる問題になってしまいます。
可搬性
店舗レイアウトの変更は、店の雰囲気を変え、シーズンごとのキャンペーンを行うために必要なものになります。そのため、備え付けの什器以外にも一時的に使用するような什器が必要です。これは使わないときの保管場所の確保が必要になりますし、収容効率も考えなければいけません。また、組み立てやすさや片付けやすさと言ったものも大切になります。収容に場所を取り、または取り出しにくところにあり、組み立ても片付けも厄介だということになれば、ディスプレイの変更がどうしても億劫になります。VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の教科書では季節ごとにディスプレイを変えたり、見せ方についての仮説をたてて検証するように言っていますが、それはすなわち労を厭わずに店内ディスプレイをこまめに変えろということです。でもこちらも人間ですから、重い什器を出したり片付けたりする面倒な作業は億劫になるのが人情です。スタッフも嫌がるでしょうし、嫌がる作業を押し付けるためにはいろいろと気苦労もしますし、嫌われますし、それで成果が出ればまだ良いのですが、出なかったらかなりこたえます。スタッフ間の人間関係や店長の威厳も絡んできますので、現場レベルではかなり切実な問題ではないでしょうか。
しかし仮説を検証するということは結果が出ないということもあり、なぜ出なかったのかを考えるということでもあります。つまり、可搬性を無視した什器というのは、結果として店舗を少しずつ改良するためのトライ・アンド・エラーにブレーキをかけてしまうのです。
什器を安全に使うために

商品を魅力的に演出するための影の主役と言える什器ですが、影の存在であるだけにその取扱い上の注意点が皆に知られているとはいえないところがあります。店舗開店時の最初だけならばプロである内装デザイナーに一任してしまえばよいのですが、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)は店長やスタッフ自身によるこまめなディスプレイの変更を求めています。
ですので、什器を取り扱う上の注意事項を説明してみます。
什器に乗ったりぶら下がったりしない
高いところにあるものを取ろうとして棚にちょっと足をかけて・・・などをしないようにしましょう。部材の脱落や什器の転倒による怪我や事故の原因になります。
最大積載質量を超えるものを載せない
耐荷重で説明した通りになります。売りたいのでつい詰め込んしまう・・・のは避けましょう。
はみ出して陳列や在庫をしない
棚板などからはみ出して陳列すると、商品が落下したり、お客様がぶつかって怪我をするといった事故の原因となります。
片面型の什器の両面使いをしない
ネット型の什器などでフックで商品をぶら下げるタイプのものは、片面用と両面用があります。このタイプの什器は壁に沿って設置することが多いので片面型も多いのですが、「島」での陳列では両面を使うこともあります。片面用でもフックを引っ掛けられそうに見えるし、「島」での陳列のために両面使いをしてしまう・・・というのは什器の転倒やそれによる怪我のもととなります。
異常を放置しない
什器は実用物です。また倉庫から出したり片付けたりします。最初はピカピカだった什器もだんだん古ぼけてくることでしょう。サビも出ますし、ディスプレイでは布で覆っているのでお客様からは気が付かないけど、裏から見ると傷だらけの古強者というのが、多くの店舗での実際ではないでしょうか。それでも耐荷重や安全性や可搬性で問題がなければ良いのですが、実際はそれらに問題が生じている構造上の異常が発生してしまっているのに、見た目の(そして実用上問題ない)ボロさに紛れてしまって見過ごしてしまう・・・このようにしていると、いずれ什器の転倒や什器の部材や商品の落下の原因となります。異常は異常として対策しましょう。
隙間や可動部には指や手を入れない
店舗は人間が立ったりしゃがんだり歩いたりしている場所なので、什器のちょっとした隙間や取っ掛かりというのは、ちょっと便利なものであったりします。頻繁に立ったりしゃがんだりしなければいけないような場所で、立ち上がるときに指をかけるのにちょうどよい突起がある・・・これを使うなというのはなかなか難しいものです。しかし人間の体重のかかった什器がどのような事故を起こしてしまうかは想像に難くありません。
キャスター付き什器の移動では商品を取り除いてから作業する
商品を載せたまま移動するとキャスター破損の原因となりますし、什器の転倒や商品の落下の原因ともなります。
キャスター付きの什器の移動では障害物を避ける
配線ダクトやレールなどの障害物を無理に越えようとすると、キャスター破損や棚板が外れることがあり、部材や商品の落下や衝突での怪我や事故の原因になります。
什器に、見た目が良くて、安定していて、商品を引き立て、使いやすく、組み立てやすく、片付けもしやすいといった要望を出していくととめどなくなってくることがあります。しかし割り切ってどれかを捨てるというわけにもいかないものです。ですので最終的にはバランスの取れたものということになりますし、そのためには経験と知識が必要になります。そのため良い什器の選び方というのは、最終的には良いメーカーを選びましょうということになります。値段とスペックだけを見ずに、什器メーカーの経験と知識と生産場所や専門性などを重視することが大切になります。